プリント基板印刷の技術が進み、個人でも精密な基板を安価に外注できるようになりました。それでも自宅での基板を自作することが盛んなのは「数枚しかいらないのなら、すぐに作れる」ことにあるでしょう。

秋葉原の電子パーツ店「aitendo」では、トナー転写シートが1枚10円ほどで売られており、トナー転写方式による基板制作が気軽にできます。今回はPIC32MXの開発基板の自作を通して身につけたテクニックをご紹介します。

制作に当たり、いろんな道具を試してみましたが、以下の道具や工具で最もきれいにできました。

• 生基板
  単純にいえば、銅メッキされた板です。この銅を溶かして残ったものが電子回路となります。
• トナー転写シート
  
  剥離剤が塗布されており、生基板に重ねて熱を加えると印刷したトナーが移動します。コンビニプリントやインクジェット用ファイン紙なども試してみましたが、結局はこれが一番きれいにできます。
• エッチング液
  
  
  基板の不要な銅を除去します。「塩化第二鉄」「腐食液」という名称でも販売されています。銅版画用のエッチング液であれば350mlで400円くらいで画材屋さんでも手に入ります。
• モノクロレーザープリンター
  表面のつるつるした転写シートは用紙持ち込み可の印刷屋さんでも断られるため、自前でプリンターを用意する必要があるでしょう。
  
  一般的なレーザープリンターはトナーを熱してインクを転写することで印刷しています。ただし、トナーの素材や印刷方式の違いより、カラーレーザープリンターや、ブラザーやHP製のモノクロレーザープリンターは使えません。新品ではキャノンの「Canon Satera LPB6030」が1万円未満で買えます。
  
  レーザープリンターはもっぱら業務用途のため、メルカリよりもヤフオクのほうが見つけやすいです。
  安くて使える中古を探すコツとして
  • Windows Vista世代以降に発売されたモデル(Windows Vista 64bitドライバーはWindows 10でもたいてい動作する)。
  • ドラムの劣化で印刷に縦の筋が入っている訳あり品(その箇所を避けてパターンを印刷する)。
  が挙げられます。それら単体でプリンター並みの価格がするので、トナーとドラムの有無は必ず確認しましょう。送料込みで3000～5000円くらいが目安です。
  
  ちなみに私が使用したのは2008年に製造されたエプソンのLP-S300です。
• プラスチックカッター
  
基板を切断するのに使います。まずは定規を当てて、かぎ爪のような刃の先端で軽く引いて筋を着け、繰り返し削って徐々に溝を深くし、最後はパキッと折ります。私が持っているのはタミヤ製ですが、結局はオルファのOEMなので、どちらのメーカーのを買うかはお好みで。
• タミヤ電動ハンドドリル
  
  
  基板に穴を開けるのに使用します。一般的なルータよりも優れている点として、
  • 複数のギアによりトルク(パワー)を上げているので、よりきれいに掘れる。
  • 単3乾電池が使える。
  • 本体が軽いのでドリルビットに力がかかりにくい（つまり、折れにくい）。
  • もともと組み立て式なので、改造がやりやすい(私の場合ミニ四駆用のパワーダッシュモーターに換装しています)。
  が挙げられます。商品レビューでは「うまく組み立てられず、いびつになってしまった」という声も聞かれますが、プラモデルと見なしても難易度は低い方なので、これがうまく組み立てられないようであれば、エッチング加工なんてとてもできません。
  
  
  ちなみにネットで見かけた「ダイソーの商品をルーターに改造」という手法を私も試してみましたが、結論としてドリル用途にはおすすめできません。動力がモーターから直に来ているため、穴を開けるほどのパワーが出ない。軸がぶれるので、真っ直ぐにドリルを突き立てられない。負荷によってモーターが熱くなるので、手に持てない。と、いうのが理由です。
  
  

  
• ルーター用ドリルビット
  
  
  軸まで細いドリルビットだと本体に固定できないので、口径が2mm以上あるルーター用のドリルビットを用意します。0.8mmと1mmの2種類があると、ワイヤーやピンの太さに柔軟に対応できます。
• クエン酸
  基板を洗浄するのに使います。食用、洗浄用、どちらでも可。
• 園芸用消石灰(水酸化カルシウム)
  
  
  少量の廃液を中和して安全に処理できるようにするために使います。アルカリ度が高い方がよい。
• セメント
  廃液処理を固めて捨てるために使います。「強アルカリ性」で中和する目的もあるため、石膏ではダメ。
• ブラシ
  基板の掃除に使います。金ブラシとナイロンブラシがセットになっているのがお買い得。
• プラスチックトレイ
• チャック付きポリ袋
  基板と溶剤を入れるのに使います。
• 小さいプラスチックボトル
  エッチング済みの溶液を再利用できるようにするため。
• 小さい漏斗
  プラスチックボトルに液体を移すのに使用。
• 木製の箸(割り箸など)
  エッチングした基板をつまむとピンセットでは錆びてしまうので。
• ネイルリムーバー(除光液)
  転写に失敗したトナーを掃除するのに使います。アセトンが含まれているタイプを用意してください。
• 両面テープ
  印刷時の用紙固定用。