スサノオ
~増田晴彦真骨頂!~

 わたしがこの作品の単行本を発売日から間もない頃に集めるために、近畿圏全域の大型書店を探しまくって、やっと見つけたものでしたが、しばらくすると地元の書店でも単行本を見かけるようになっていました。エニックス社の漫画単行本スペースが昔に比べ確実に縮小している中でもなお、作品を手にとることができるということは、「雑誌だけでの人気」と「増田晴彦氏の人気」が決して一致しないことを証明するものだと思えるのです。

 「スサノオ」は、はっきりいって作品以外の事柄に対して不満が尽きない漫画です。これ以上の偏向化を阻止すべく、ガンガン編集部が率先して企画した作品でもあるにもかかわらず、人気がないと見切るや、長い目で見ることもなく、早々に打ち切ってしまいました。あと少しの後ろ盾があれば、さすがに「ベルセルク」と「ふたりエッチ」が共存するヤングアニマルのような事例までは行かないと思いますが、あっさりとこってりが入り混じった雑誌になっていたのではないかと、心残りでなりません。


 それはさておき、「スサノオ」のインパクトは増田晴彦氏の作品にはじめてであったとき以上のものがありました。とにかく「どすげえ」としか言いようがありません。表題のとおり、日本神話をモチーフに、作者独自の解釈をくわえたものでクリーチャーデザインのセンスを生かしたキャラクター達は、まさに氏であるからこそできる芸当であり、また、決して同人使用素材とは成り得ない確固たる個性をかもし出しています。アクションシーンに対する筆の腕は衰えることは無く、大陸の一部が破壊されたり、海岸一帯をいとも簡単に飲み込んでしまうほどの大津波といった、近年の氏には見られなかった、スケールの大きい描写は、以前にも増したパワーを感じとれるほどです。逆説的になってしまいますが、この作品がガンガンで不発に終わってしまったことが、むしろ名誉なことに感じられてきます。

カバーイメージ 出版社
エニックス
発行年
2001
ISBN(第1巻)
4-7575-0406-3

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