
~多くのファンが推す最高傑作!~
前にも述べたとおり、不遇な作家である増田晴彦氏の作品は、これからという時で完結を余儀なくされたものが数多く、それらの作品を読むたび歯がゆく感じてしまうのですが、この作品は「書き下ろし」であり、がっちり枠内でストーリーが構成されていることもあり、感動のラストシーンが見事に描かれています。つまり、中途半端に打ち切らせずに、最終回までをきっちり描かせたら、これだけのクオリティのある作品を提供してくれるのだという証明でもあるのです。
時はヴァイキングが台頭する9世紀の北欧。凶暴な竜を退治することで過去の犯罪を帳消しにしてもらおうという不埒な理由から、英雄の子孫であるという女性と竜退治に旅立つヴォードを軸に話が展開されていくのですが、とにかくノンスピードで一気に読ませるパワーがこの作品には満ち溢れています。
ストーリだけではありません。様々な資料によって構成された世界観は、よりファンタジーへの想像力をかき立たせ、「北欧神話シリーズ」と銘打つだけの価値を十二分に兼ね備えています。
ストーリーの要所要所には、出会いや別れといった、ぐっとくる演出がちりばめられていたり、多大なる時間を費やされて描かれた格闘シーンはまさに「ド迫力」の一言。特にラストの200ページ目以降は胸を打ち、数多くのファンが「増田晴彦最高傑作」として推奨するのもうなずけます。
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出版社 JICC出版局(現宝島社) |
発行年 1990 |
ISBN 4-7966-0015-9 |
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出版社 エニックス |
発行年 1994 |
ISBN 4-87025-067-5 |
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第3節